未知の世界

福るん日記

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こんにちは、福るんです。

 

ご存じの方も多いと思いますが、昨日10月31日は衆議院選挙の投票日、、であると同時に、

2年ぶりに開催された金沢マラソンの日でした。

御年45歳、これまで一度もフルマラソンに挑戦したことはありませんでしたが、今回、金沢医科大学枠で2枠空いているとの通知が各部署に届き、駄目元で応募させて頂いたところ、なんと参加できることとなり、この度、人生初のフルマラソンを体験させて頂きました。

 

4か月前に暗闇の階段で足を踏み外し、見事に内かえしに足首を捻り捻挫。それまでの2年間くらいは、近所のジムに週1回くらい通って5km程走っていたのですが、捻挫してからは足が遠のいてしまっておりました。

 

足首を捻挫したその瞬間、これまで骨折を経験したことはなかったものの、「あっ、折れた!」と思ったのですが、直後から何とか歩行はできたので、骨折まではしていないだろうと自己判断し、それ以降、整形外科医でありながら固定も何もせず自然治癒を待っていたのですが、やっぱり駄目ですね。3か月経っても痛みがすっきりせず、走ることは愚か、まともに歩くこともできなかったため、ジムもずっと休んでおりました。

足首の捻挫を甘く見ることなかれ!

ちゃんと治療しないとこんなに長引くということを身に染みて体験しました。軽い捻挫でもきちんと整形外科を受診し、適切な処置を受けることをお勧めします。

 

適切な処置とは、、、

  • きちんと一定期間固定すること→超音波で靭帯の回復具合を見ながら適切な時期まで固定をきっちりすることが重要
  • 徹底したRICE療法

R: Rest(局所の安静)

I: Icing(局所のクーリング)

C: Compression(局所の圧迫)

E: Elevation(患肢の挙上)

 

というわけで、話が脱線してしまいましたが、ずっと何も練習できずに時間だけが過ぎていき、さすがにこのままではやばいと思い、足首の状態は完全ではありませんでしたが、10月に入って3か月ぶりにジムの門を叩きました。痛みはあるものの何とか5km走ることができたのですが、42.195kmを完走する自信は全くなく、不安しかない日々を過ごしておりました。結局、本番の昨日までの1か月、走れた総距離は20kmほど、、、

周りからは、絶対無理やから止めときって散々言われたのですが、今回、このマラソンには、福るんTシャツを着て、「こまつ整形外科クリニック」の看板を背負って走ると決めておりましたので、何が何でも、例え脚が壊れようとも完走すると心に決めていましたので、周りから何と言われようとも準備不十分の状態ではありましたが、走るつもりでとうとう昨日という日を迎えました。

 

当日の天候は曇り。肌寒い朝でしたが、過去3回中2回が雨だったと聞いておりましたので、とりあえず天候には恵まれたと思い、準備をして家内に送ってもらいスタート地点に向かいました。実は今回、医科大整形の後輩も一人出場することになっており、彼は今回2回目の挑戦でしたので、1回目のノウハウを事前に教えてくれました。

その内容が、

  • 乳首パット
  • 5本趾ソックス
  • 芍薬甘草湯、消炎鎮痛剤の持参
  • アミノ酸系の補給物

 

乳首パットってなんやねん?って一瞬思いましたが、すぐに衣類と乳首が擦れてえらい目に合うと直感的に理解し、すぐにドラッグストアでやや大きめの絆創膏を前日購入。5本趾ソックスも同じことだろうと思い同時に購入。芍薬甘草湯は買えなかったのですが、当日優しい後輩が1包くれて(後述しますが、これにすごく助けられました)、あとは家にあったロキソニンを持参してスタート地点に向かいました。

 

手荷物を預け、後輩整形外科医と記念撮影を済ませた後、自分に割り振られたブロックでスタートの瞬間を待ちました。

 

8時45分スタート!

多くのランナーとともに、私も足首のことやこれまでの準備不足といった一抹の不安を感じながらいざスタートを切りました。

スタートから5分で尿意を感じ5kmくらいの地点ですぐにトイレへ。すっきりして再び走り続けること、おそよ2時間。これまで最高でも7,8kmしか走ったことがなかったのですが、気が付けば周りのランナーたちにつられて20km近く走っていました。

すでに未知の世界!

と思いながら意外にいける、そして足首も思ったほど痛くない、これならいける!?と思った次の瞬間、捻挫した左足とは逆の右ふくらはぎと太ももも違和感を覚え、攣りそうになってこのままではやばいと思い、走るのを止め、ゆっくり歩き始めました。

しばらくすると治まってきたので、再び走り出すとすぐにまた同じ現象が、、、

駄目だと思いまた歩く、そしてまた走ってはまた攣って、、、その繰り返しでこのままでは完走できないと焦りを感じはじめ、気分転換にイヤホンを耳にあて音楽を聴きながらごまかしごまかし走るも次第に攣る頻度が頻回になって、痛みも増してきたため、給水所で例のアレを1包内服。

そうです、後輩にもらった芍薬甘草湯です。飲んで10分くらいすると少し楽になりまた走れるようになったのですが、漢方薬の王様、芍薬甘草湯をもってしてもこの過酷な状況にはその効能にも限界があったようで、しばらくするとまた痛みを感じるようになり、走っては少し歩くの繰り返し。もちろんロキソニンも内服しましたが、まったく効果なし。「もう駄目か」、、、諦めの気持ちが脳裏をよぎったときです、沿道でコールドスプレーをランナーに差し伸べている天使のような女性がいるではありませんか。

私もすぐに駆け寄り、両脚にスプレーをしてもらうと、また少し走れるようになり、脳裏をよぎった邪念を振り払いゴール目指して再び走り出しました。

世の中には本当に優しい方がいるもんですね。自分もあんな風に何の見返りも求めずに困っている人に手を差し伸べることができる人間になりたい、、なんて思いながらふと沿道のプラカードに眼をやると32kmまで来たではありませんか!

もう少しだと思う反面、脚がついてこない状況に苛立ちを覚えながらも何とかもうあと少しだと言い聞かせて脚を引きずりながら、ただただゴールだけを目指して無心で走り続けました。

それでも35kmを過ぎた頃から本当に脚が前に出なくなってきて、いよいよ限界か、やはりちゃんと準備してこなかった自分が悪いのか、、なんて思いながら、ここまで来たのに悔しい、、、と涙がでそうになったその時でした。

 

「福るん、がんばれ !!」

 

聞き覚えのある声が聞こえてきて、ふと沿道に眼をやると、家内と娘3人が心配そうに私を見つめながら旗を振って応援してくれていたのです。

その姿を見て、例え身体がボロボロになろうとも何が何でも完走するんだという気持ちが蘇ってきて、気が付けば無意識に脚が前に出ていました。

それからゴールするまでのことはあまり記憶にありません。

でも気が付いた時には完走のゴールドメダルを手にしていました。

「5時間31分」

決して自慢できるタイムではありませんが、目標であった完走を成し遂げることが出来ました。

この場をお借りして沿道まで応援に駆けつけてくださった虎谷先生ご夫妻(本日11月1日が、とらたに整形外科の開院日とお忙しい最中に応援してくださって本当にありがとうございました)、医科大整形外来の看護師さんである池本さんに厚く御礼申し上げます。

 

そして今回、人生で初めてマラソンに参加してみて気が付いたことが一つあります。

それは沿道の声援です。

こんなに沿道の声援がランナーの心を奮い立たせ、元気にしてくれるんだってことを初めて知りました。途中本気で感動して何度も泣きそうになりました。お礼を述べた方々だけではありません。全然知らない方々の声援でもこんなに元気や勇気をもらえるんだってことを初めて知りました。

 

やっぱり人は人に優しくしてもらって幸せを感じ、人に優しくして喜んでもらえたことを人生の意義、生き甲斐と感じる、そんな性を持って生まれた生き物なんだなって悟った気が致します。

声援を受け走りながら、これから「こまつ整形外科クリニック」を立ち上げ、南加賀の地域の皆様の一つでも多くの「笑顔」に触れられるよう、精進していく決意を新たにした次第です。

 

ヴィクトール・フランクルは言っています。

我々が人生の意味を問うのではない。すべての人は人生に問われているのだと。

 

私の使命は、全世界から見れば取るに足らないちっぽけな存在であっても、一整形外科医として携わった多くの方々に自分にできる精一杯のことをする、そしてその方々から「笑顔」というお返しを頂戴する。それこそがわが人生の意味であり、幸せであると、それを改めて実感させてくれた、そんな初マラソンでした。

今日は脚が全く言うことを聞かず、ロボットみたいになった一日でした(笑)。

後輩医師が教えてくれた5本趾ソックスをもってしても足趾はこんな有様でした。

5本趾ソックスでなかったらどうなっていたかと思うとゾッとします。

ちなみに私から今後フルマラソン出場を考えておられる方へのアドバイスを一つ。

乳首パットも重要ですが、股ずれ防止に内股にもしっかりパッドを貼っておかれることをお勧めします。擦れて真っ赤です。ヒリヒリ痛いです。辛いです。家内が写真を撮ったのですが、さすがにパンツ一丁のお股を見せるのはお恥ずかしいのでやめておきます。

お風呂痛くては入れません。息こらえして我慢して入りましたが、、、(笑笑)。

こんなに身体が悲鳴を上げていても、どこかにまたフルマラソンに挑戦したい、今度は5時間切るぞ!なんて思っている自分がいます。不思議なものですね。

今度はクリニックのスタッフと一緒に参加できたらいいなぁ。

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