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こんにちは、福るんです。
今日は、整形外科医になって20年、初めて典型的な掌蹠嚢胞症性関節炎の患者さんを診る機会を得たので、掌蹠膿疱症について少し触れてみたいと思います。
膝痛でこれまで何度か大学の外来を受診されている方で、ヒアルロン酸注射で経過観察されていたのですが、たまたま今回、私が診させて頂きました。「先生、この間、別の先生に水抜いて注射してもらったけど、また腫れてきて痛くなってきたので、また水が溜まってるんじゃないかって思って来たんです…」
患者さんはそう言って膝を見せてくれました。確かに水が溜まっている。一目見てわかるくらい多量の関節液が溜まっていたので、前回同様に水を抜いて、その後に今回はヒアルロン酸ではなく、抗炎症作用の強いステロイド注射を施行しました。レントゲンだと少し軟骨が擦り減っていて、変形性膝関節症の初期だけど、どうしてこんなに頻繁に水が溜まるのかな?って疑問に感じ、これまでのカルテ記録をよくよく見直してみると、既往に掌蹠膿疱症で皮膚科に通院されていることがわかり、掌蹠嚢胞症性関節炎だって気が付きました。これは代わるがわる担当医師が変わって診るのはよくないと判断し、自分が担当医になって継続して診させて頂くことになりました。(准教授がこれからずっと診てくれるんですか、ありがとうございます!って、なぜかすごく感謝して頂きました、笑)
掌蹠膿疱症ってあまり馴染みのある疾患ではないですよね。これは読んで字の如く、手のひらや足のうらに、水ぶくれや膿(うみ)がくり返しできてしまうっていう病気です。
基本的に膿疱の中に菌は入っていないため、人に感染することはありません。特徴的な症状は、小さな水ぶくれ(水疱)からできる膿疱です。できはじめには痒みを伴うことが多く、しばらくすると膿疱が乾いて茶色っぽいかさぶたとなり、剥がれ落ちます。まわりの皮膚にも炎症がおよんで赤くなり、表面の角層が浮いてきてカサカサします。角層がつみ重なって厚くなると、歩くたびにひび割れて痛みもでてきます。浮いてめくれてくる角層をはがしたくなるかもしれませんが、刺激によって悪化することがあるため(これをケブネル現象と言います)避けてください。水疱や膿疱を無理につぶしたり、毟り取ったりすることもよくないですね。
膿疱は、次々に出てくる場合と、増悪と緩解を周期的にくり返す場合とがあります。どんな時に悪くなるのか、例えば風邪を引いたときや疲れたとき、といったように自身で把握しておくことが重要です。この病気は基本的には皮膚科で治療されることが多い病気ですので、整形外科医が遭遇する機会は少ないのですが、掌蹠膿疱症に関節炎を合併したときは整形外科医の出番です。
掌蹠膿疱症性関節炎とは、掌蹠膿疱症性に関節炎を伴ったもので、掌蹠膿疱症患者さんの約10〜35%に合併します。胸の中央に位置する胸骨と肋骨、鎖骨をつなぐ関節(胸肋鎖関節)に多く見られ、背骨(脊椎)、骨盤(仙腸関節)、末梢の関節にもみられます。炎症が起きた関節が腫れたり、激しい痛みが続いたりします。
今回の患者さんはこの末梢関節炎による膝の炎症、痛みだったんですね。こうした関節炎症状は、皮膚症状の増悪、軽快にほぼ相関していると言われており、掌蹠膿疱症が治癒すると関節炎も消失することが多いです。実際、今回の患者さんも手のひら、足のうらの症状は決していい状態とは言えない状態でした。今後は皮膚科との連携をより密にして治療に当たらせて頂こうと思っています。
というわけで、膝の痛みにも色々な原因があります。膝の痛みで困っておられる方は是非一度、開院後にこまつ整形外科クリニックまでいらしてください。
これからも皆様のお役に立つ医療情報を、「福るん日記」を通じてどんどんお伝えしていきたいと思っています。ほんの少しでも「福るん日記」を訪れてくださった方々のお役に立てれば大変嬉しく存じます。今後とも、こまつ整形外科クリニック共々、「福るん日記」をよろしくお願い致します。