腰部脊柱管狭窄症

ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう

原因と病態

腰椎(腰の骨)は5つあり、その中に下肢へとつながる神経が入っていて、この神経の入っている部分を脊柱管といいます。この脊柱管が何らかの原因で狭くなった状態を腰部脊柱管狭窄症と呼びます。

脊柱管が狭くなる原因にはいくつかあり、出生時から脊柱管が正常よりも狭い状態のものを、先天性脊柱管狭窄症、成長に伴い脊柱管が狭くなるものを発育性脊柱管狭窄症といいます。

一方、脊柱管狭窄症のほとんどが変形性腰椎症により変性した椎間板が潰れて脊柱管の方にはみ出したり、腰の骨と腰の骨のつなぎ目である椎間関節が変形し骨棘とよばれる骨性の突起が形成され脊柱管に突出したり、脊柱管内に存在する黄色靭帯という靭帯が分厚くなった結果、脊柱管が狭くなるというものです。

男性に多いとされています。腰椎すべり症という腰の骨のずれに伴う狭窄は女性に多いです。

症状と診断

脊柱管内の神経の本幹(馬尾神経)が圧迫されると両下肢、臀部、会陰部の異常感覚、神経の枝(神経根)が圧迫されると片側性の下肢の痛みが出現します。

馬尾神経と神経根が両方とも障害されると、これらの症状が重複してみられるようになります。歩行により症状が出現あるいは増悪して歩けなくなり、休むとまた歩けるようになる間欠性跛行(かんけつせいはこう)が特徴的です。

腰部脊柱管狭窄症による間欠性跛行は神経性間欠性跛行と呼ばれ、腰を曲げる(しゃがむ、椅子に腰かける、壁にもたれかかる)ことにより、下肢に出現した症状が消失して再び歩きはじめることができるようになります。

神経性間欠性跛行には、神経の本幹(馬尾神経)の障害による馬尾性間欠性跛行と、神経の枝(神経根)が障害される神経根性間欠性跛行があります。

馬尾性間欠性跛行では、歩行負荷により、両下肢、臀部、会陰部の異常感覚が出現します。

具体的には、

  • しびれ
  • 灼熱感
  • ほてり

といった症状が多く、

  • 下肢の脱力感
  • 残尿感
  • 尿意ひっ迫感

に代表される膀胱直腸障害を伴うこともあります。しかし下肢の痛みを認めることは稀です。神経根性間欠性跛行では、歩行負荷により下肢の痛みが出現します。

一方、閉塞性動脈硬化症に代表される下肢の血流不全に伴うものを血管性間欠性跛行と呼びますが、血管性間欠性跛行では、姿勢の変化で症状の軽快や消失が全くみられません。

閉塞性動脈硬化症などは、血圧脈波測定装置(ABI検査)で容易に鑑別することが可能です。当院でもABI検査は可能です。お気軽にご相談ください。

レントゲン撮影により、原因疾患である変形性腰椎症、腰椎すべり症などの有無をある程度把握することができます。MRIでは、脊柱管における神経組織と周囲組織との相互関係を正確に把握することが可能で非常に有用な検査です。

治療法

馬尾性か神経根性かによって経過が異なります。神経根障害の場合、自然緩解が期待できますが、馬尾障害ではほとんど期待できません。

また、進行性の筋力低下、麻痺を認める場合も手術が必要です。したがって、手術適応は原因となっている疾患を問わず、馬尾障害のタイプと保存療法で改善しない神経根障害のタイプということになります。

保存療法としては、消炎鎮痛剤、脊柱管内の神経を栄養する血液の流れを改善させるプロスタグランジン製剤、神経障害性疼痛改善薬などの投薬加療や、仙骨硬膜外ブロック注射も効果が期待できます。

手術は骨を削って脊柱管を広げる椎弓切除術が基本になりますが、脊柱管が狭いだけでなく、腰の骨(腰椎)と腰の骨の間が不安定でグラグラしているような場合には、椎弓切除術に加え椎体間固定術が追加されます。

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