腰椎分離症

ようついぶんりしょう

原因と病態

背骨(脊椎)の一部である腰椎(脊椎の下から5つの背骨で構成される部分)の中で一番下にある第5腰椎に好発する、疲労骨折の一種です。

スポーツなどで激しい運動を繰り返していると腰椎の椎弓と呼ばれる部分に疲労骨折を起こして亀裂が入ることがあり、それが進行するとその部分が分離してしまいます。

これが腰椎分離症です。

第5腰椎に起こりやすいのは、この部分に負担がかかりやすいためといわれています。椎弓の左右両側が分離した場合は、腰椎が前にずれる腰椎分離すべり症に進行していくケースもあり注意が必要です。

骨が未発達な成長期において、身体の前後屈や腰のひねり、ジャンプからの着地といった動作を繰り返すスポーツ

  • サッカー
  • 野球
  • バスケットボール
  • バレーボール
  • 柔道
  • ラグビー

などの過度な練習が原因となるケースが多いです。

10~15歳の男児に多く、一般人のおよそ5%、スポーツ選手では実に30~40%に分離症を認めるともいわれています。ただし、練習し過ぎると必ず発症するというわけではなく、体質的な要因も関与していると考えられています。

症状と診断

腰痛が主な症状ですが、お尻や太ももに痛みが出ることもあります。腰を後ろに反らせたり、腰をひねったりすると痛みが誘発されます。

安静時は痛みがないこともあるため、発症に気づかないケースも少なくありません。2週間以上痛みが続く場合は、腰椎分離症である可能性が高いと考えられます。

また、発症したことに気づかずそのままにしていて、高齢になってから痛みが出始めるケースもあります。分離した部分の神経が圧迫されると、坐骨神経痛によって腰から下肢にかけて痛みとしびれが生じます。

レントゲン撮影を行い、腰椎の分離の有無と程度を調べます。

ただし、早期の場合レントゲン検査でははっきり確認できないことも多くあるため、早期診断にはMRI検査が有用です。

治療法

スポーツ活動を中止し、保存療法を行います。

骨癒合の可能性がある場合は、数ヵ月間安静を保って骨がくっつくのを待ちます。

その間はコルセットを装着するなどして、患部に負担がかからないようにします。痛みが軽減してきたら、ストレッチや筋トレを開始します。

痛みに対しては消炎鎮痛剤を使用します。リハビリ加療として、神経ブロックや腰椎牽引、低周波療法や温熱療法などを行います。

腰痛は2~3週間程度で軽快することが多いですが、保存的療法では効果が得られず、痛みが長期間続いたり、神経が圧迫され下肢に痛みやしびれがみられる場合、分離した腰椎がずれてすべり症に進行した場合などには、手術による治療が検討されます。

治療によって疲労骨折が治って骨癒合が得られた場合には、再発防止のためストレッチなどの運動を行います。

具体的な方法としては、腰椎の負担を軽減する働きがある腹筋と背筋を鍛えることが大切です。また、股関節が固いと身体をひねったときの腰への負荷が大きくなるため、太ももの筋肉(特にハムストリングス)も含めた股関節周辺のストレッチも非常に重要です。