ようついついかんばんへるにあ
原因と病態
腰の骨(腰椎)は5つあり、その骨と骨の間にはクッションである椎間板で介在しています。
椎間板の外側は線維輪と呼ばれる組織で保護されていますが、重たい物を持ち上げたり、スポーツなどの外傷で腰に強い負荷がかかることで、線維輪が損傷を受けることがあります。
線維輪が損傷を受けると、内部に存在する髄核と呼ばれる組織が椎間板の外へ飛び出てしまいます。20~40歳代に多く、男女比は2~3:1で男性に多いです。
腰椎椎間板ヘルニアで髄核が外に飛び出ると、神経を圧迫して腰痛をはじめとする諸症状が現れるようになります。腰椎椎間板ヘルニアは腰に負担のかかりやすい職業に就いている方などが発症しやすいといわれています。
また喫煙習慣や既往症(かかっている病気)などもリスク要因となることが知られています。
症状と診断
腰痛と片側の下肢痛が主訴であることが多いです。運動や労働によって増悪し、安静で軽減します。咳やくしゃみで痛みが増悪することもあります。
下肢痛がどの部分にみられるかでその神経が圧迫障害されているかある程度推測することができます。
レントゲンでは、椎間板は抜けて写ってしまうため、確定診断をつけることは困難です。腰椎椎間板ヘルニアの診断には、MRI検査が極めて有用です。
飛び出たヘルニアが神経を圧迫している像がよくわかります。ただし、MRIで椎間板ヘルニアを認めたとしても、その20~40%は無症状なので診断には注意が必要です。
治療法
通常、多くの患者さんが保存療法で3カ月以内に軽快します。したがって、腰椎椎間板ヘルニアに対して、むやみに手術を選択することは避けなければいけません。
激しい痛みがある場合は、安静が必要です。
ただし、なるべく早く通常の生活に戻ることがよい結果につながるので、完全な安静臥床はできるだけ避けましょう。
痛みが生じないような姿勢で安静を保つほか、軟性コルセットなどの装具を使用します。急性期の痛みには湿布や消炎鎮痛薬が有効です。
また、なかには神経ブロックと呼ばれる治療を行うこともあります。急性期症状が軽快した後には、リハビリテーションを行います。腰背筋や腹筋に筋力強化訓練とストレッチにより腰部の支持性を補強して、腰部への負担軽減を図ります。
保存的療法が治療の基本となる腰椎椎間板ヘルニアですが、
- 尿失禁、
- 尿が出ない
- 肛門がしびれた
- 麻痺が出た
など重篤な症状が見られる場合には、緊急手術を含め外科的治療が必要なこともあります。
椎間板ヘルニアの影響で足の筋肉が衰えている場合や、日常生活に支障をきたすほど症状が重い場合も同様です。手術は椎間板摘出術が行われることが多いです。
近年、内視鏡的にヘルニアを切除する方法も増えています。術後のヘルニア再発率は5%程度と言われています。