凍結肩(五十肩)② サイレント・マニピュレーション

とうけつかた(ごじゅうかた)サイレント・マニピュレーション

原因と病態

五十肩とは40~60代の方に多い疾患で、江戸時代の書物、俚言集覧(りげんしゅうらん)に初めてあらわれた言葉といわれておりますが、近年では、「凍結肩」と呼ばれています。

特にきっかけがなく肩に痛みが起こり、徐々に肩の動く範囲が制限されていきます。また寝ている時に痛む(寝返りで痛む、痛い方の肩を下にして眠れない)のも特徴です。

原因としては、肩関節の関節包という部分に炎症が起き、縮んでしまうことが原因と考えられていますが、詳細なメカニズムはまだはっきりわかっていません。

40~60代に発症しやすいのは、加齢によって肩周辺の組織が劣化し、もろくなり始めること、その一方で、日常生活においてまだまだ活発に体を動かす人が多いこと、肩関節は動く範囲が大きいために骨以外の組織が引っ張られやすいことなどが挙げられます。

これらの要因が重なることで、凍結肩が起こりやすいと考えられています。

特に糖尿病がある方は、そうでない方と比べて凍結肩になりやすく、治りにくいことがわかっています。糖尿病により血糖が高い状態が続くと、関節包などを構成しているコラーゲンが硬くなりやすいためと考えられています。

糖尿病のある方は凍結肩の発症や悪化を防ぐためにも、食事や運動療法、血糖降下薬などで適切に血糖コントロールすることが大切です。

近年、この五十肩に対する新しい治療法として「サイレント・マニピュレーション」という方法が開発されました。これは肩に麻酔を行って動かすことにより、縮んでしまった関節包を剥がすことで、10分程度の施術で肩の動きを劇的に改善する治療法です。

石川県でこの治療を受けられる施設はまだ少ないですが、当院では動きの制限が著明な方や、五十肩の罹患期間が長い方を対象にこの治療を行っています。

具体的な治療方法をご説明します。

治療法

①まず、エコーを用いて頚部の神経に麻酔を行います。これにより肩を動かした際の痛みが無くなります。麻酔がかかった腕は肩を動かしたり、肘を曲げたりする事が出来なくなりますが、7~10時間で元に戻ります。施術後の関節内の炎症を抑えるために、肩関節内に炎症を抑える注射も合わせて行います。

②固まった肩関節を全方向に動かして、縮んだ関節包を剥がしていきます。
関節包の剥がれるときに、「バリバリ」という音が聞こえますが、痛みはありません。

③麻酔が切れて腕が動くようになるまでは、三角巾を着用していただきます。7~10時間後には肩・肘の動きが戻ります。動くようになれば三角巾は外して頂いて構いません。

④翌日来院して頂き、状態を確認します。

⑤リハビリテーションによる治療を開始します。積極的に肩を動かし、サイレント・マニピュレーションの効果が維持されるようにします。

⑥治療後1~3カ月程度で、多くの場合、肩の動きがかなり改善されます。

保険診療で治療可能です。五十肩でお困りの方は、お気軽にご相談ください。