骨吸収抑制薬関連顎骨壊死

こつきゅうしゅうやくかんれんがっこつえし

原因と病態

骨吸収抑制剤(ビスフォスフォネート)は破骨細胞に作用し、骨吸収を抑制します。この作用により、骨粗鬆症、悪性腫瘍の骨転移の治療として広く使われている薬剤です。

近年、ビスフォスフォネート治療をされている方が抜歯などの侵襲的歯科治療を受けた際に顎の骨が壊死してしまう顎骨壊死というものが報告されています。

顎骨壊死の発症機序は未だ不明でありますが、予防には口腔内の衛生管理を十分に行うことが重要とされています。

顎骨壊死の発生頻度は、骨粗鬆症治療として、経口、静注を問わず骨吸収抑制剤治療を受けている方の0.001~0.01%といわれています。

がん患者さんでは、骨粗鬆患者さんよりも顎骨壊死の発生率は高いと報告されています。

骨吸収抑制薬の使用と歯科治療の連携

それでは、当院が推奨する具体的な対応策について述べさせて頂きます。

「骨吸収抑制薬をこれから使用する予定」である場合の歯科治療

全ての歯科治療は骨吸収抑制薬治療開始の2週間前までに終えておくことが望ましいです。

しかし、がんを患っておられる方で骨吸収抑制薬治療を遅らせることができない場合や、骨折リスクが高い骨粗鬆症を有する方では、骨吸収抑制薬治療と歯科治療とを並行して進めることも止むを得ないと考えます。

骨吸収抑制薬治療中は、歯科医師による定期的な口腔内診査を推奨します。

骨吸収抑制薬を「使用中」である場合の歯科治療

侵襲的歯科治療前の骨吸収抑制薬の休薬について

抜歯のような侵襲的歯科治療前の骨吸収抑制薬の休薬が顎骨壊死を予防するか否かは不明です。

米国口腔顎顔面外科学会は、骨吸収抑制薬投与を4年以上受けている場合、骨折リスクを含めた全身状態が許容すれば2カ月前後の骨吸収抑制薬の休薬について主治医と協議、検討することを提唱しています。

半年に一度の注射製剤(デノスマブ)使用中である場合の歯科治療

経口の骨吸収抑制剤の場合と同様に、徹底した感染予防処置を行なった上で休薬は行わずに、侵襲的歯科治療を進める。

骨粗鬆症患者に対するデノスマブの投与は6カ月ごとに1回であり、デノスマブの血中半減期が約1カ月であることなどを加味して、歯科治療の時期や内容を検討します。

具体的には休薬せずにデノスマブ使用後3~4カ月目の終わりまでに侵襲的歯科治療を実施し、侵襲的歯科治療後は骨性治癒がみられる2ヵ月前後経過観察ののち、次のデノスマブの使用時期をむかえるのが望ましいと考えています。

骨吸収抑制薬の再開時期

抜歯などの侵襲的歯科治療に際し、骨吸収抑制剤の休薬をした場合、骨吸収抑制薬再開は基本的に侵襲的歯科治療部位の十分な骨性治癒がみられる2ヵ月前後が望ましいです。

しかし、主疾患の病状により投与再開を早める必要がある場合には、術創部の上皮化がほぼ終了する2週間を待って創部に感染がないことを確認したうえで投与を再開します。

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