そっこんどうしょうこうぐん
足首の捻挫後に続く足首の痛みってもしかして…
足の捻挫を経験した方が、その後も足の外くるぶしの辺りに痛みやしびれが残る場合、足根洞症候群(そっこんどうしょうこうぐん)が疑われます。
足根洞症候群は、足関節の外傷だけでなく、高齢者やアライメント異常を有する方、ハイヒールのような靴を履く習慣のある方でも発症することがあります。
原因と病態
足根洞は、足の外側に距骨と踵骨の間にある漏斗状の溝のような構造の空洞です。この空洞の広い開口部は、足の外くるぶしの前下方に位置します。
足根洞症候群は、この空洞に問題があることが原因で起こります。
足根洞症候群は、一時的な関節痛や筋肉痛と診断されることがありますが、症状が消えない場合は、整形外科を受診されることをおすすめします。
足根洞症候群の治療法には、
- ストレッチやマッサージ
- 足底の矯正インソールの使用
があります。早めの治療が症状の改善につながります。
足根洞症候群は、足関節の内返し捻挫による周囲靭帯や軟部組織の損傷によるものや、ハイヒールの使用、内反足やO脚などの足や下腿の姿勢異常によるもの、足関節を形成する下腿骨・距骨・踵骨の変形を起因とするもの、痛風・関節リウマチなどの疾患を起因とするものがあります。
足関節の内返し捻挫による場合、足関節の外側靭帯や足根洞外側開口部の靭帯を損傷すると、足が不安定になり足根洞内の神経終末を支持する軟部組織が損壊します。
また、足関節捻挫により出血が足根洞内に滲出し、その血液が固まって線維性の瘢痕組織を形成することもあります。
これらの損傷組織が残存することにより疼痛やしびれが起こります。足関節捻挫が完治する前に再度負傷すると、足関節の外側靭帯のみならず足根洞外側開口部の靭帯損傷を合併する確率が高くなります。
また、足関節捻挫の後遺症として関節不安定性が残った場合に、しばらく無症状であっても数か月や数年して足根洞症候群を発症することがあります。
治療法
足根洞症候群の治療方法は、
- 注射療法や手術療法
- サポーターや装具による固定補助
- 足底板等による足の姿勢補正
- 運動療法によるリハビリ療法
などが挙げられます。
注射療法は、局所麻酔薬とステロイドの混ぜたものを週1回の間隔で5~6回程度施行することで改善することが多いとされています。この注射療法に並行して腓骨筋の機能回復や足の深部知覚の改善のためのリハビリを行います。
足底板療法は、アライメント異常や足の不安定性を起因とした足根洞症候群の場合に施行されます。足底板を装着することで足の接地バランスを整えます。
また、アライメント異常で足の後方に重心が偏ったタイプの場合は、ヒールウエッジに加えて足の横アーチを補正するパッドを追加装着することもあります。
サポーターや装具による固定は、足関節の不安定性が残っている場合や、足関節骨折あるいは足関節の変形性関節症などの障害により足関節の不安定性がある場合に施行されます。
足関節や距骨下関節の不安定性が主な原因である場合は、固定装具を利用することで足根洞症候群の改善を促進します。
運動療法などのリハビリには、腓骨筋の機能低下や足の深部感覚の低下を改善するトレーニングが含まれます。また、アライメント異常に対する改善トレーニングを指導することもあります。
足根洞症候群の治療方法には、様々な選択肢があります。患者さまの症状や状態に合わせて最適な治療法を選択することが重要です。
足関節のリハビリには、足関節の背屈動作や回内動作の反復運動が中心的な役割を果たします。足指が上に上がるように足首を曲げる動作を行うことが最も簡単な方法です。
特に負荷を掛けずに単純に曲げる、もどす、の繰り返しをするだけで十分です。ただし、足根洞周辺に痛みや腫れなどの炎症がある場合は、足関節の底屈は禁忌です。
スポーツ選手などでは、運動用のゴムチューブなどを利用して負荷を掛けることで筋力強化ができます。ゴムチューブを使った運動では、足関節背屈運動に加え、距骨下関節の回内運動を行うことで効果が上がります。
足根洞の痛みが無くなったら、足関節最大底屈位から最大背屈位まで大きく動かす運動を指導します。腓骨筋と拮抗するふくらはぎの筋肉も動かすことで筋肉の協力関係が強化されます。
手術療法は、注射や固定装具、理学療法などの保存療法で症状が改善されない場合、または一時的に症状が減弱しても再び悪化する場合に選択されます。
一般的な手術としては、足根洞内の滑膜切除術が行われます。手術後は約1週間程度のギプス固定が必要で、その後リハビリを行います。
靭帯再建術や距踵関節固定術などの他の手術も病態に応じて選択されることがあります。足根洞内滑膜切除術では、症状改善が見られる症例が全体の9割程度と言われています。
靭帯再建術は距骨下関節の靭帯断裂部分を修復し、多くは足根洞内滑膜接受御術と併用されます。距踵関節固定術は、保存療法や足根洞外側組織郭清術、靭帯再建術などを施行しても改善されない場合に選択されます。