大腿骨頭壊死症

だいたいこっとうえししょう

原因と病態

大腿骨頭壊死症とは、大腿骨頭を栄養する血液の流れが悪くなり骨が阻血性の壊死をきたす結果、力学的に弱くなった大腿骨頭が潰れて圧壊変形を生じてしまう疾患です。

外傷など壊死の原因が明らかな症候性大腿骨頭壊死と、明らかな原因のない特発性大腿骨頭壊死症に分類されます。

特発性大腿骨頭壊死症では、ステロイドの投与歴、アルコール多飲歴が壊死発生に深く関連していることは間違いないものの、その発生機序は未だはっきりとはわかっていません。

私は、厚生労働省の難治性疾患克服研究事業のメンバー、特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン策定委員会のメンバーを務めさせて頂きました。

学位論文のテーマは、このステロイド関連特発性大腿骨頭壊死症の病態解明で、世界で初めて走査型電子顕微鏡で大腿骨頭内の血管が脂肪で詰まった像を捉えることに成功しました。

病因として様々な説が報告されていますが、私は、脂肪塞栓が原因ではないかと思っています。

症状と診断

変形性股関節症と同様に、股関節前面の痛みが主体となります。階段を踏み外したときなど、小さなストレスが股関節にかかったときに、股関節に急性の痛みが出現することが多いです。

重要なことは、大腿骨頭壊死は発生しただけでは無症状ということです。壊死部が潰れたときに初めて骨折と同じように痛みが出現します。

無症状でも壊死は発生している可能性があります。

早期診断にはMRIが有用です。

壊死発生から6週くらい経過すると、画像上で変化がみられるようになると言われています。

治療法

壊死範囲が小さい場合には、経過観察を行います。経過観察期間中は、日常生活における活動性を若干制限します。

壊死範囲が大きい場合、壊死部の圧壊を免れることは少ないので、手術療法が選択されます。圧壊が軽度で、健常部が比較的残っている場合には、自骨で治す骨切り術の適応になります。

大腿骨頭の圧壊が高度であったり、変形が進んでしまった場合には、人工関節置換術の適応となります。

人工関節を行う場合、注意しなければいけないのは、大腿骨頭壊死症の方は変形性股関節症の方と比べ術前の股関節可動域が非常に良いこと、術前の脚長差がほとんどないことが挙げられます。

術前の可動域が非常に保たれているために、術後の可動域も非常に良い反面、術後脱臼の頻度が変形性股関節症で人工関節置換術を行った場合よりも高いことが報告されています。

また術前の脚長差がほとんどないため、術後に手術した脚が健側よりも意図せず長くなってしまうことがあります。

仮に1cm長くなってしまうと、歩行時に非常に不自然な違和感が生じてしまいます。このようなことを避けるためには、股関節疾患に精通した人工関節認定医に手術を依頼されることをお勧めします。

私はこれまで21年間、股関節を専門に2000例以上の人工股関節置換術をさせて頂きました。股関節に不安のある方は安心してご相談ください。

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