ひざぜんじゅうじじんたいそんしょう
原因と病態
膝前十字靭帯は関節の安定性のためにとても重要な靭帯です。
損傷すると
- 「膝が抜ける」
- 「膝がはずれる」
- 「膝がずれる」
といった不安定感が出て、日常生活やスポーツに支障をきたします。
基本的にギプス固定では治癒しないこと、さらに放置した場合、半月板や関節軟骨の損傷をきたす可能性があり、痛みや膝のひっかかり感が出てくることもあります。
日常生活で不安定感を生じる方やスポーツ選手などの活動性の高い方には手術治療が勧められます。
膝前十字靭帯損傷は、スポーツ活動中に発生することが多く、ジャンプからの着地、急停止、急な方向転換などによって発生します。
症状と診断
怪我をした瞬間には、何かブチッと切れたような音(ポップ音)や、膝が突然はずれたといった感覚を生じたりします。
しばらくすると(数時間~数日)、関節内に徐々に血がたまり、膝全体が腫れて痛みを伴うようになります。
損傷による出血が少ない場合には、半月板損傷(約50%合併)や軟骨損傷、他の靱帯損傷が合併していなければ、多少の腫れは伴いますが強い痛みを感じることはほとんどありません。
怪我をしてしばらくすると、膝の腫れも次第におさまり痛みも軽減しますが、膝をひねったり、急に止まろうとしたりする時に、膝くずれなどの不安定感を感じるようになります。
レントゲンで骨折がないか確認します。膝前十字靭帯損傷の確定診断にはMRIが極めて有用です。
治療法
リハビリを中心とし膝関節周囲の筋力強化を行いながら、必要に応じて装具を装着し、日常生活動作の獲得とスポーツ活動への復帰を目指します。
しかしこの保存療法では、膝崩れを繰り返すことにより半月板や関節軟骨への損傷が2次的に起こるリスクが高くなります。
以前では膝前十字靭帯損傷はスポーツ選手の間で手術療法が重要であると言われてきました。
損傷後スポーツをやめれば問題なしとされていましたが、近年では膝の老化(変形性膝変化)の進行が早まり、人工膝関節置換術に至る確率が高くなることがわかってきたことから、若年者であっても基本的に手術を勧めています。
膝前十字靭帯損傷の場合、縫合しても再断裂のリスクが高いため、基本的は別の靭帯を用い再建術を選択します。
復帰までには通常、術後1ヶ月で日常生活を送れるようにし、術後3ヶ月からジョギングを開始、術後6ヶ月でスポーツ復帰を目指しますが、コンタクトスポーツや激しい動きのスポーツ復帰までは7~9ヶ月を要するこが多いです。